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経営講座の第57回目です。

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Question
不動産の二重売買について
当社で土地を購入したのですが、自分こそが買主だと主張する某会社から
土地の引き渡しを請求されています。
当社が購入したはずなのに、第三者も同じ人から購入していたという事態が
そもそも起こりうるのでしょうか。

Answer
起こりえます。この場合、先に土地の登記を自社名義にしておかないと、所有
者であることを第三者に主張できなくなってしまいます。

以下では、売主をA,貴社をB,某会社をCとし、具体例を用いて説明いたしま
す。BがAから土地を購入した場合、その土地の所有権はAからBに移転す
ることとなります。そうすると、その後にCがAからその土地を購入したとして
も、Aは既に所有権を失っており、Cはその土地の所有権を得ることはないは
ずです。

 しかし、判例はこのように考えてはいません。
BがAから土地を購入した時点で、所有権の移転が生じているとする点は同じ
です。
しかし、判例は、所有権の移転は一時点をもって決するような明確なものでは
なく、結局はそれについての登記を備えるまでは外部から分からないため、登
記がなされるまでは確定的なものではないとしています。
 そうすると、Aはその土地について完全に無権利となっているわけではない
ため、Cへの売買も有効に行うことができることになります。
そして、BとCのうち、先にその土地の登記を備えた方が確定的に所有権を取
得することとなります。
 したがって、ご質問のケースにおいては、土地の引き渡しを請求してきたCが
既に同土地の登記を備えているのであれば、引渡しに応じる必要があります。
なお、この場合、BはAに対し、売買契約の債務不履行に基づき損害賠償を
請求できると考えられま
す。Cに対しては、CがAに対し、自己に売却するよう積極的にそそのかしてい
たという事情がある場合に限り、損害賠償を請求する余地があります。
他方、その者がまだ登記を得ていない場合には、引渡しを拒むことはできま
すが、登記を備えない限り、いまだ所有権の帰属は未確定という不安定な状
態が続くことになります。

なお、不動産の二重売買を刑事法の観点からみると、売主Aについては、2人
目の買主であるCに土地を売却した後、Cがその土地についての登記を備え
た時点(=Cが確定的に所有権を取得した時点)で、横領罪が成立するとされ
ています。
また、CがAに対し、自己に売却するよう積極的にそそのかしていたという事
情がある場合には、Cについても横領罪(の共同正犯)が成立すると考えられ
ます。