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経営講座の第49回目です。

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Question
遺言書があった場合の相続

代表取締役は父、専務取締役は母、常務取締役が長男である私
です。株はそれぞれ60%、30%、10%所有しています。
その他、会社に関係していない妹が二人います。
父母とも、会社に関係する財産は私に相続させるという遺言書を
書いていますが会社に関する財産が父母の全財産です。
遺言書があっても、妹二人には相続する権利があると聞きました
がどういう権利でしょうか。また、権利を行使させない方法はある
でしょうか。

Answer
「遺留分」と呼ばれる一種の期待権があります。権利を行使させ
ない方法はありません。

1両親の一方が死亡したことによる相続が発生した場合、(相続
放棄をしなければ)原則として、配偶者(夫または妻)が2分の1を
残りの2分の1を子供で均等相続します。
遺言書がない場合には、相続人の全員で遺産の全てをどのよう
に分割するか協議をして配分方法を決します。今回の場合ですと
貴殿の妹さんには一人当たり6分の1(1/2×1/3)の相続分がある
こととなります。
2遺言書において、「全財産を××に相続させる」とすることも可能
であり、これにより単独で不動産の名義変更や銀行口座の解約な
どを行うことも可能となります。しかし、遺言書において一切相続す
る財産がなかった相続人には「遺留分」と呼ばれる一種の期待権
があり、これを行使した場合には相続をした相続人は遺留分に
相当する財産を交付しなければならないとされています。今回の
場合ですと貴殿の妹さんには一人当たり12分の1
(1/2×1/2×1/3)の遺留分があり、遺言によって「全財産を××
に相続させる」としていた場合であっても万全ではありません。
3遺留分を事前に放棄することは、家庭裁判所の許可を得て、する
ことが可能とされておりますが、あえて遺留分を放棄する必要性は
乏しく、自らの意思に基づいて申立てを行う必要があるため、現実
的には遺留分を行使させないことはできないと考えます。
4しかし、事業に供している不動産や会社の株式(持分など一部を
含む)が事業に関与していない者に相続させることは、会社の運営
面が著しく不安定となるため、可能な限り回避することが良いと考
えます。
5そこで、遺言書だけではなく、例えば「議決権制限株式」や「取得
条項付株式」などいわゆる「種類株式」を利用した事業承継対策や
生命保険を利用した対策など、相続税からの視点だけではなく総合
的な対策が必要であり、紛争が生じることがないように妹さんにとっ
ても一定の満足を与えるような対策(施策)を立てておくことが重要です。