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経営講座の第171回目です。
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有給休暇取得と皆勤手当
質問
有給休暇を取得した場合に皆勤手当を減額するのは法違反だと思って
いましたが生活に支障が出ない範囲でなら構わないのでしょうか。
回答
労働基準法の主旨やこれまでの判例をもとに、「すべきではない」とされ
ていますが実際に法違反となるかどうかは裁判をしてみないと分かり
ません。
●解説
労働基準法の条文の中に 『有給休暇を取得したことを理由に皆勤手当
を減額や不支給としてはいけな い』という具体的な決まりはありません
が、第136条にて『有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減 額
その他不利益な取扱をしないようにしなければならない』とだけ定め
られています。
この条文の主旨としては、「従業員が有給休暇を取得しようとすることを
妨げてはいけません」というもので す。
また、最高裁判所ではこの主旨を踏まえた上で「使用者の努力義務で
ある」または「私法上の不利益取扱の効果まで否定する効果はない」と
解釈しています。
つまり、「労基法の主旨に反しない範囲でなら、自由に取り扱っても構い
ません」ということです。したがって、有給休暇を取得した際の皆勤手当
を取扱の是非は、個々のケースで判断することとなって います。
それを象徴する裁判例が「沼津交通事件 (最二小判平5.6.25)」です。
この裁判では、有給休暇取得した従業員に対して皆勤手当を減額または
不支給としたことが有効とされ、会社側が勝訴しました。会社側が勝訴
した主な要因は2つです。
(1) 皆勤手当の額が小さかった (最大でも月給の1.85%) こと
(2) タクシー会社であり、従業員の稼働率が収益に直結していたこと
(1)はそもそも額が小さい皆勤手当が1回の取得で半額、2回の取得で
不支給とされても『有給休暇の取得を阻害する大きな要因ではない』
という判断に繋がりました。
(2)はタクシー業界の特殊性が認められたということです。他にも
タクシー会社における有給休暇をめぐる裁判で会社側が勝訴した事例
があります。(錦タクシー事件、練馬交通事件、大国自動車交通事件)
この判例で最も重要なのは『有給休暇の取得を阻害する大きな要因で
はない』とされた点です。つまり、タクシー業界は車の稼働率が収入に
直結するため、多く稼動した従業員を評価することは妥当であり、同時
に皆勤手当の額自体が小さかったので不利益の程度が小さく「労基法
の主旨には反しない」と判断されました。他業種で、この判例を参考と
する場合の注意点は、以下の2点になります。
(1) 皆勤手当の額はどの程度か
(2) 従業員1人の稼動の有無が収益に直結しているかどうか
有給休暇の取得を妨げることが問題となるわけですから、日当(有給
休暇を取得した時の1日あたりの賃金)と同等以上の額の皆勤手当で
あれば、有給休暇の取得を妨げると判断されることは、ほぼ確実である
と考えられます。
さらに、有給休暇の取得を制限することに妥当性があるかどうかも無視
できません。
例えば従業員1人が欠員しても直ちに収益に影響が出ない業種であれば
、仮に小さな額の皆勤手当であっても、裁判になれば法違反と判断され
てしまう恐れがあります。
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