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経営講座の第147回目です。
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電子取引のデータ保存とインボイス制度の基本
電子帳簿保存法・インボイス制度といった言葉をよく目にするように
なりました。どちらも経理業務に関係することはわかるのですが、
具体的にはどのような制度なのでしょうか。
電子帳簿保存法が改正され、2022年1月1日から取引に関する
書類をデータでやりとりする場合、それらの書類を基本的にデータ
のまま保存しておかなければならなくなりました。ただ、企業側の
準備が追いついていなかったため、実質的にスタートが2年間先
送りされています。一方、インボイス制度は消費税に関するもので
、スタートは2023年10月からです。ただ、その準備を始める時期で
あり、また、電子帳簿保存法の改正も一部関係しているため、
話題となっているものと思われます。制度としては別物ですので、
両者の基本的な内容を押さえつつ、会社の対応について概要を
解説します。ただし、細かなルールを全て解説することはできず、
また、制度の具体的な運用が変わることもあります。顧問税理士
の先生や経理・会計システムの提供元などと十分に話し合って
対応を進めてください。
電子帳簿保存法の概要
1 電子帳簿保存法で決められていること
電子帳簿保存法は、パソコン等を使って作成する税金関係の帳簿
や書類を、電子データで保存できるようにする法律です。本来、
これらの帳簿や書類は紙で保存しなければなりません。しかし、
現代の状況を考えれば、紙での保存は帳簿や書類を作成する企業
側にとっても、 また、それをもとにして税金に関係する業務を行う
行政側にとっても非効率です。そのため、電子帳簿保存法によって
、紙保存のいわば「例外」として電子データ保存が認められることと
なりました。ただ、一般的には、電子データは改ざんが容易とされ
ます。全く同じ内容をいくらでも複製できますし、削除・訂正も見た目
からはわかりません。そのため、電子データで帳簿・書類を保存
することができる条件を定めておく必要があります。電子帳簿
保存法には「帳簿・書類を電子データで保存しておくための条件」
も定められているのです。
2 電子帳簿保存法の改正概要
電子帳簿保存法は以前からあったものですが、今回大きく次の
改正がありました。
2-1電子データで帳簿・書類を保存できる条件の緩和
2-2電子取引に関する電子データの保存義務
「1電子データで帳簿・書類を保存できる条件の緩和」は、電子
データの形式での帳簿・書類の作成・保存を普及させることで、
企業の生産性向上や行政の税金業務の効率化を図るねらいが
あります。その意味では、企業として積極的に利用したい改正
です。ただ、大きな話題となっているのは「2電子取引に関する
電子データの保存義務」です。これまでは「帳簿書類の
電子データ保存は、条件をクリアした企業に対する恩恵」でした。
しかし、今回の改正により、一定の場合には「そもそも紙での
書類保存が許されなくなる」こととなりました。つまり、「必ず電子
データで保存しなければならない場面」ができたということです。
しかも、ただ保存すればいいだけではなく、保存する際の条件も
決められているのです。このような事情から、経理や会計に関す
るシステムを提供する企業が積極的に案内しており、「電子帳簿
保存法」という言葉を広く耳にするようになったものと思われます。
インボイス制度の概要
1インボイス制度は消費税にかかわるもの
インボイスという言葉は「送り状」という意味であり、もともとは
貿易にまつわる取引書類を指して使われていました。しかし、
話題となっているインボイス制度はこれとは違い、消費税に
関する制度です。消費税率が10%に引き上げられる際、品目に
よっては8%となる「軽減税率制度」が導入されました。つまり、
消費税率が2種類になったということです。消費税率が1種類の
場合、どんな取引を行おうが税率は変わりません。しかし、2種類
だと取引する品目によって税率が異なるため、その品目にどちら
の税率 (10%・8%) が適用されるかをはっきりさせる必要が出て
きます。この判断は、取引する品目を常時扱っている「売り手」の
方がより正確に行うことができます。そこで、売り手から買い手に
対して「この商品・サービスの税率は○%で、消費税額は○円
です」という証明書のようなものを発行させる仕組みが作られ
ました。これがインボイス制度です。つまり、インボイス制度は
軽減税率導入のために作られた制度ということです。軽減税率
は2019年10月に始まったので、インボイス制度も実は同時に
スタートしています。 しかし、2023年9月まで4年間猶予されると決
まっていたため、実際の影響はほとんどありませんでした。猶予
期間の終了まで1年をきっており、準備を始める段階となったこと
で、こちらも話題となっているものと思われます。
2インボイス制度の真の目的は「免税事業者つぶし」 ?
インボイス制度は軽減税率をきっかけとして作られたとされていま
す。しかし、実際の内容を見ると、「消費税をしっかり国に納めさせ
る」ことが目的となっているように思われます。消費税を実際に負担
するのは、商品やサービスを購入する消費者です。商品やサービス
を提供する側である事業者は、商品・サービスの価格に消費税分を
上乗せした金額を消費者から受け取ります。消費税分を「預かって
いる」 わけです。この預かった消費税を事業者が国に納めることで
納税されます。実際に消費税を負担するのは「消費者」、消費税を
納める義務 (納税義務)があるのは「事業者」と、両者が分かれて
いるのが消費税の特徴です。 |
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