個人情報保護方針


 

経営講座の第146目です。
                            経営講座バックナンバー
育児休業の分割取得

11 育児休業の取得回数
育児休業の申出事項には、「休業を開始しようとする日及び休業を終了
しようとする日」がありました。 つまり、育児休業は、申出時点で開始
予定日と終了予定日が決まる「ひとまとまり」の休業だということです。
そして、改正前は、育児休業は原則1回しか取得することができないと
されていました。ひとまとまりの育児休業を1回取得してしまえば、特別
な理由がない限り、再度取得することができなかったのです。
このようなルールだと、育児休業期間の上限(基本的には1歳まで)
よりも短い期間で申し出ることが難しくなり、結果として仕事に長い
ブランクができてしまうことが多くなります。しかも、日本の場合はその
多くが女性従業員であり、女性の職場復帰や雇用継続を難しくして
いました。
※育児休業の終了日の繰り下げ(育児休業を延長すること)は、
理由を問わず、今までも改正後も可能です。しかし、繰り下げは
すでに育児休業を取得している親(多くは母親)が行うため、繰り
下げて育児休業 期間が長くなってしまうと、結局、ブランクが長く
なってしまいます。
そこで、今回の改正では、育児休業を2回取得することができるよう
になりました。ただし、2回に分けて取得できるのは1歳までの育児
休業の場合のみで、1歳以降の育児休業(1歳6か月・2歳まで)に
ついては、原則として今まで通り1回のみしか取得できません。
※ かなり特殊な例ですが、特別の事情があれば2回取得できる場合
もあります(今回の改正でそのようになりました)。
なお、2回取得できるといっても、原則として子が1歳になるまでという
育児休業の期間は変わっていません。これが「分割取得」と呼ばれて
いる理由です。
2 分割取得に関するルール
育児休業の分割取得は理由を問わず可能です。また、初回の申出時
に2回分まとめて申し出なくても構いません。従業員が取得したいと
思ったタイミングで、それぞれ申し出ることとなります。もっとも、申請
期限が原則として1か月前までであること、1回の取得がひとまとまりで
あること は、今までと変わりません。 ただ、そもそも今までは1回しか
取得できなかったため、自社の制度や運用もそれに合わせている
会社が大半だと思います。非常に影響の大きい改正といえるでしょう。
その他の注意点
1 育児休業給付金の活用
育児休業期間中の賃金の取り扱いについては、基本的に会社が決
めることができます。多くの会社では無給としているでしょう。育児
休業中に賃金が支払われないことが取得をためらう理由のひとつ
となることは、先に述べました。
ただ、休業前と同額とまではいきませんが、育児休業中は雇用
保険上の制度である「育児休業 給付」という給付金の支給を受ける
ことができます。女性従業員が育児休業を取得する際には多く利用
されているところですが、もちろん男性従業員も育児休業給付を受け
ることができます。また、育児休業を取得する期間も問わないため、
短期の取得であっても受けることができます。もちろん支給には条件
がありますが、男性従業員でも利用できることを忘れないようにして
おきましょう。
※2022年4月1日から、妊娠や出産を従業員から知らされた場合、
会社は一定の事項を個別周知しなけ ればならなくなっています。
その周知事項の中に、「育児休業給付に関すること」が含まれています。
2 育児休業制度の拡充と複雑化
育児休業やそれに関連する制度は、度重なる改正によって従業員
にとって手厚く改定されてきました。 その主な理由は、国全体の
労働力が減少していく中でいかにして女性の退職を防ぐか、また、
より抽象的な課題である出生率問題への対処の一環という、政策的
なものです。その意味では、個々の改正内容が果たして本当に従業員
の利用しやすいものとなっているか、また、ニーズに応えるものとなって
いるかは議論の余地があるでしょう。特に、制度が拡充されていくこと
で 複雑になり、制度を運営する会社にとっては負担が大きいのもと
なっています。本記事で解説できたのは主な内容のみであり、実際
にはさらに細かく、そして多くのルールが定められています。とはいえ、
ワーク・ライフ・バランスに対する意識の高まりや性別による役割
分担意識への批判、仕事に対して抱く期待の多様化といった、
従業員側の社会的な変化があることも事実です。育児休業やその
関連制度の取得に関心を持つ男性従業員は今後増えるでしょう。
そうすると、従業員やその配偶者の妊娠・出産というライフイベント
への対応がトラブルに発展する可能性も高まります。従業員本人と
の間だけでなく、SNS等によって会社の評判に影響が生じる例も
あります。まずは法律の決まりをしっかりと理解した上で、適切に
対応できる体制 を整えることが重要です。