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経営講座の第123回目です。
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Question
役員の責任

当社の代表取締役が、代替わりの準備として、自身の息子を取締役
に就任させることを 計画しています。その方は現在当社とは別の
会社で従業員として勤務しており、今すぐの 取締役への就任には
積極的ではありません。
そこで、しばらくは現職に在職したまま、形式的に取締役として就任
してもらうことを打診しようとしています。低額ではありますが役員
報酬も支払う予定なのですが、本人にとって不利益となることが
あれば教えてください。

Answer
取締役には法律上、様々な責任が課されているため、その点が不利益
となる可能性があります。詳細は解説をご確認ください。
●解説
取締役や監査役といった会社の役員は、法律上、会社に対して誠実に
役員としての職務を遂行する義務を負っています。そして、その義務に
違反して会社に損害を与えた場合、会社は役員に対してその責任を追及
することができます。
この責任は、実際には取締役としての職務を行っていない、名目的・
形式的な役員でも負うこととなります。
もっとも、この会社に対する責任は、会社が追及しない限りは問題となり
ません。ご質問の場合、貴社がご子息の責任を追及する可能性は低いと
思われるため、この点は大きな不利 益とは言えないでしょう。
しかし、取締役は、会社に対する責任のほか、会社以外の第三者に対し
ても責任を負うことが法律上定められています。この責任の典型例は、
放漫経営などによって財務状況が悪化し、支払いの見込みがないにも
かかわらず、仕入れや商品の購入を行うような場合です。 このような
場合、仕入れ先や商品の購入先は、代金を回収できないという損害を
被っている ため、その責任を取締役自身が負うという仕組みです。
名目的・形式的な役員だったとしても、取締役でありながらそのような
行為を放置したことを理由として、この責任を負う可能性があります。
もちろん、取締役が第三者に対して責任を負うケースは多くはなく、
通常の経営の範囲ではあまり心配することはありません。しかし、経営
状態が悪化してしまった場合や、取引先や従業員との思わぬトラブル
に見舞われてしまった場合など、万が一の場合に取締役であることの
法的リスクは顕在化します。在職している会社の兼業許可の問題も
あるでしょうから、ご子息と十分に話し合われることが肝要です。