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経営講座の第120回目です。
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Question
休職制度の相違

当社では正社員に対して、業務と関係のない病気や怪我で出勤できなく
なった壕合、1か月間の休職制度を設けています≠アの間は基本的に
通常通りの賃金が支払われます¢ホして、アルバイトやパートには休職
制度自体を設けていません
この4月から同ー労働同一賃金法が中小企業に対しても施行されると
思いまずが、このような違いもその法律の対象となるのでしょうか。

Answer
休職制度そのものは賃金ではありませんが、いわゆる同一労働同一
賃金法の対象とはなります。詳細は解説をご確認ください。

@同一労働同一賃金法の内容
2020年4月1日にから、いわゆる「同一労働同一賃金法」が施行されて
います≠サの内容は次の通りです。

パ一ト・有期法8条
(不合理な待遇の禁止)
第ハ条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、
賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の
労働者の待遇との間において、 当該短時間・有期雇用労働者及ぴ
通常の労働者の業務の内容及ぴ当該業務に伴う責任の程度(以下
「職務の内容」という。)、当該職務の内容及ぴ配置の変更の範囲その
他の事情のうち、当該侍遇の性質及ぴ当該待遇を行う目的に照らして
適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けて
はならない。

この中には「賃金」という言葉は出てこず、「待遇」という言葉が使われ
ていまず。つまり、いわゆる「同一労動同一賃金法」というのは、正社員
と非正社員負との「待遇差」を間題とする法律ということになります。

この「待遇」には、条文に書かれている基本給や賞与以外にも、諸手当
福利厚生、休暇など従業員に対するすべての待遇が含まれるとされて
います。そのため、ご質問にある休職制度も、この条文の適用対象と
なります。「同一労働同一賃金法」という呼ばれ方をしていますが、
賃金以外の待遇も広く対象となる点に注意が必票です。
A休職制度についての最高裁判決
バート・有期法8条は2020年4月1日に大企業に対して施行されたぱか
りですので、まだこれに関する最高裁判決は出ていません。しかし、
バート・有期法8条の前身である労働契約法20条については多くの
最高裁判決が出されておリ、休職制度について判断したものもありま
す。この最高裁の判断はパ一ト・有期法8条への改正後も基本的に
通用すると考えられているため、確認しておきます。

事案の概要
・被告となった会社には、正社員のほか時給制契約社員等の
雇用区分があった・正社員には、少なくとも90日の有給の私傷病
休暇が付与されるが、時給制契約社員には無給で10日のみの付与
しかなかった・そこで、時給制契約社員の数名が、私傷病休暇以外
の違いも含め、訴えを提起した
・正社員は郵便業務のうち標準的な業務に従事することとなってお
リ、人事異動も予定されている
・時給制契約社員は郵便業務のうち特定の業務のみに従事し、
人事異動も予定されていない

このような状況で、最高裁は、「郵便業務を担当する正社員に対し
て有給の私傷病休暇を付与する一方で、同業務を担当する時給制
契約社員に対して無休の休暇のみを与えるという違いは、不合理な
違いである」旨を述べ、違法だとしました。
その理由は次のようなものでした

理由
@有給の病気休暇は、正社員には長期の継続勤務が期待されるか
ら生活保瞳を図り療養に専念させることで、継続的な雇用を確保する
目的で設定されている
A時給制契約社員についても、相応継続的な勤務が見込まれるので
あれば趣旨は妥当する
B時給制契約社員には、相応に継続的な勤務が見込まれている

つまり、最高裁は、私傷病休暇に対して賃金を支給しているのは、長期
雇用の確保のためだと理解したということです。そのため、同じように
長期雇用が見込まれる時給制契約社員にも、本来であれば私傷病
休暇中に賃金を支払う必要があったという判断です。
この事件では、時給制契約社員は契約期間が決められていましだが、
実際には更新が繰り返され、勤務期間が10年程になっていました。
そのため、有期雇用であるにも関わらず、「相応に継続的な勤務が
見込まれる」という判断となっていまず。
注憲しなけれぱならない点は、正社員と時給制契約社員では、仕事
の内容に違いがあるにも関わらず違法と判断されている二とです。

ご質問でも、アルバイトやパート従業員が期間雇用ではない場合や、
期間雇用であっても実際に長期間勤務しているような場合には、
アルバイトやパート従業員にも有給の休職制度を設けなけれぱなら
ない可能性があります。